それはカントリーという音楽ですか

やっとお母さんが私の卒論を読み始めた。「この漢字むつかしい、何て読むの？」「私にも分かりません、なぜならそれは引用文だからです―」というやりとりを何度か交わしつつ、照れくさいのですが（ちなみにその難しい漢字は「韜晦」でした）。
両親は化学、物理専攻と実験をともなう学部にいたため、卒論も分厚いものになっていたと思うのですが、たった24枚のぺらいブツをバカにされなかったのでホッとしています。

ことばってむずかしいなあー
そもそも言葉を使うこと自体が不毛なことなのでは、とよく思います。
その言葉を知らない限り使えないわけで、でも体験したことのある感覚っていうものは確実に語彙の何倍もある。だから知ってる言葉で補ってみるんだけど、ひどいことになる。
裂帛とかさいきん覚えた言葉だけど字面いいですよね。いつかつかおう。


卒論執筆の追い込み時期は、大学の学科室というものを借り切って、10名程度でこもって生活のほとんどをそこで過ごしていました。あまりに入り浸りすぎてもう学生には使わせないことになってしまったらしいですが。ケチー。
で、自分のパソコンを持ち込むため「音楽！音楽を…！」と発作的にiTunesを起動させ周りにいるみんなにも聴かせるという迷惑をなんどかやっていました。で、その反応としてよくきいたことばが「カントリー調だね」と「ハワイアンだね」でした。

新鮮！私としてはカントリーやハワイアンを聴いてるつもりはまったく無いのはもちろんです。ということは友人ズと私とで「かんとりー」や「はわいあん」などの言葉の解釈がぜんぜんちがうっていうことになります。そしてみんなが普段聴いてるものと私が流した音楽は、みんなにとって距離のあるものである、ということにもなるわけです。でもそんなことはなくって、ご存じのとおり私だってポップスを聴いているにも関わらず。

でもあんまり親しみのない音楽に関しては、ジャンルを特定することは難しい。耳では「こういう音楽」というものを素直に受け止めることが出来たとしても、それを言葉に置き換える作業になると、知っている言葉を探すしかない。そうすると、カントリーやハワイアンなどの極端な表現しか見つからない。そうなればものすごい違和感が襲ってくるのです。

ジャンル分けの不毛さというのはそれが言葉である以上しょうがないものではありますよね。というわけで私は音楽のカテゴライズが非常に苦手です。だってそこから何も生まれないもの。疲れるだけだもの。良いじゃないの「あまり親しみのないかんじ」で終わって。それか形容詞をつけくわえて「あまり親しみのないドロドロしてでもなんかゆったりめの、とにかく意味が分からないかんじ」にするとか。

ある程度聴いたことのある感じだと「あのミュージシャン系」という表現が使えますが、それだってある程度聴かなきゃいけないからめんどくさいし、下手すると「The Strokes以降」とかってまた一つのジャンルになりかねないので、やっぱりパスです。ミュージシャンにたとえるのは最初の段階だけにしたほうがいいのかなあと。私は最近「誰々に似てる」って思うのをやめにして、この人がつくったこういう音楽、というスタンスで最初から入るようになってしまってます。無意識のうちにいつのまにかそうなってた。まえは結構「えーこれアレっぽい」とか普通にゆってたのに！ひい！


、、、とだらだら書き連ねてきたことをまとめると

「語りえぬものについては沈黙せよ」でいいのでしょうかヴィトゲンシュタイン先生。