真ん中はめんどくさい

理とかいてコトワリと読みますね。コトを割っていく。言葉によって世界を分けていく。それをきちんとやらないといけない。なんとなくその場を、やり過ごすために言葉を選んではいけない。(p.156)

書く人/村松恒平

[プロ編集者による］文章上達＜秘伝＞スクールというメルマガを本にまとめたやつ第3弾。
Q&A方式で文章について、というか人生について深く潜っていくものです。

1巻では文章そのものについての質問が多かったけど、この本ではだんだん人生相談みたいな方向に。笑
怪しいスピリチュアル系と思わしき分野でさえ、村松さんが丁寧に質問を読み解き回答していくことで、あっち側にとんでってしまわないようにしています。
途中で「なんだか最近の傾向が宗教みたいですよ」という質問があるんだけど
ホントに紙一重の問題なんだよね。
文章をつくるのは結局は心だから、村松さんは心に立ち返って回答するわけで
そうすると理屈で説明できない部分がでてきます。
そういうことばかり考えていると現実では「危なくない？」と敬遠するひとがおおいけれど
心を取り扱うことが宗教にすぐ結びついてしまう日本人の感覚だと
まだきちんと向き合えないんだろうなあ。
村松さんはスピリチュアル系と呼ばれるものからはだいぶ距離を置いて、真摯に心の問題を「言葉で」解決しようとしています。重たい質問でも一般化して、読者みんなが自分のこととして捉えられるように工夫してるのです。
しんどそうです。笑


読んでる間は深呼吸してるみたいでした。うおおお！という表現に出会う度、ずいぶん自分に対しての息苦しさを感じていたのだなーと。
一貫して村松さんは「言葉を大事に扱うことの大切さ」を説いていると思います。
曰く「世の中の悩みの八割以上は、言葉の混乱が関わっていると思って」いるんだとか。
簡単にふりまわしちゃいけないものだと気づいてないのではないか、と。
現に私はそうなんですけれども。

一番驚くのは、村松さんが質問文から「書かれてないこと」「無意識に隠してること」をズバリ見抜いてしまうところです。こんなことしちゃうから、怪しいとか思われるんだよーｗ
いつも質問に突っ込みすぎずに一定の距離をおくから、「ここで意味がずらされてる」とか「自分の欠点をはぐらかしてる」というのが見えていて、質問したひとはこの回答をみたとき、めちゃくちゃ恥ずかしいんではなかろうかと同情さえしてしまいます。
恥をかくだけの価値がめちゃくちゃあるとはいえ、鋭すぎて私だったら1週間は凹むね。

周囲から好かれないタイプのひとは、自分のことしか考えていなくて、その自意識過剰っぷりが、何もいわなくても周囲に感覚として伝わるそうです。うるさーいっておもっちゃうんだって。
その他無私のススメ的な回答がいっぱいあって、参考にできそうだなと思いました。
自分から離れられる自由ってのがあるんだぞと。

行間がゆったりしてるとはいえ、470ページ分の情報を一日でつめこんだので
感想としてはだいぶつっこみすぎてるかもしれません。
もう少し経って読み返したら、もっと客観的に眺められるかも。
こういうの、恥ずかしいけど、感想として残しておかなくては。

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濃密島田三連発

日本文学界でいちばんのイケメン、島田雅彦さんの本を読んでみました。


佳人の奇遇/島田雅彦

いくつもの小さな物語が同時進行で語られ、登場人物全員がオペラ「ドン・ジョバンニ」公演日に集結する、というおはなし。もてない大学講師と幼なじみのこととか、マエストロの女関係とか、あがり症のオペラ歌手とホステスの取引とか、義娘に恋しちゃったお父さんとか、一癖ある恋愛関係がオーケストラのように重なっています。
というわけで、濃いです。笑
特に山場があるわけでもなく、濃い話をさらりと語るので軽い感じがあります。でも最後に怒濤のハッピーエンド連発は、ちょっと面白かった。
テレビドラマっぽい小説で、物足りなかったかな。
あと島田さんはふくらはぎフェチかと思われます。



妄想人生/島田雅彦

エッセイ集。エロい話から政治の話まで。優雅な文体でエロを真剣に語るときが一番楽しそうです。
島田さん曰く日本のポルノは妄想によって発達しており、質において外国のものを上回るだとか。
というものを谷崎潤一郎をあげて力説しておられます。川端康成も若い女の子が大好きだったし、田山花袋もあんなだし（この作品によって日本文学は変な方向にいきました）、日本の文化は昔から変態が担ってきたといっていいのでしょう。

そのほか彼の好きな言語、クラシック音楽、農業、ユダヤ人、バスク地方についてのことなど。
バスクって特殊な地域なのだそうですね。他の地域とちがって古い種族が住んでたのらしい。
本で言及されてたゴンブローヴィッチを読まなくては。



不惑の手習い/島田雅彦

男前で多趣味の島田さんが、さまざまな習い事を体験しまとめたエッセイ。
男前だから、習ってるところの写真が多い。しかもカラーもたくさんある。
そして極めつけはコスプレもしっかりしている。
二胡、茶摘み、バーテン、いけばな、左官、トランポリン、書道、料理など
実にさまざまな分野をかじってみてるわけですが
バーテンといけばなはかっこよかった。笑
この人のファンじゃなければぜったい辟易するでしょう。つくづく耽美派だと思う。

のいーっ

すべては、あの日から。
金子達仁

j sportsではバルサTVというのがあって
試合の実況解説は倉敷さんと金子さんがコンビを組むことが多い。
ライブ放送ではなく録画なのでふたりは雑談混じりに解説していくのだけど
これがまためちゃめちゃおもしろい。

金子さんはなぜかしらないがFC琉球のスーパーバイザーというわけのわからない役を担っており
そのおもしろい解説が沖縄のテレビ局できけたりする。
北谷競技場でバルサの試合をみているようなテンションを保ち
弱いFC琉球の試合を解説する金子さんinかりゆしウェアはなかなかに味わい深い。

とまあいつのまにかこの人の名前をよくきくようになったので
著作を読んでみることに。
感情の起伏が激しく、理論的というよりは感覚を大切にする金子さんは
実はあんまり文章を書くのに向いてないんじゃないかなあと思ったりするんだけども
スポーツライターってそのくらいのほうがいいのかもしれない。

料理上手！　らしく食べ物の描写はよかったです。
このまえ解説しながら「スペインのビールはヨーロッパ一まずい」「僕はバドワイザーの水割りって呼んでます」といっていたけどおそらく本当なんでしょう。笑

やっぱりおしゃべりしている金子さんのほうがおもしろいかな。
倉敷さんとのコンビはほんとにすてきです。サッカー以外の話も笑える。
決定機になるとのけぞったように「のいぃぃぃいっ」て叫ぶのがくせになるんですよね。
それが沖縄でもきけるんだから、FC琉球はぜいたくです。